決算書の見方・読み方 (第5回) ー キャッシュフロー計算書のキホン(1)

第5回 決算書の見方・読み方、キャッシュフロー計算書のキホン(1)

(第4回はこちら)

キャッシュフロー計算書は、国際会計基準導入の一つとして2000年3月期から上場会社にその作成が義務付けられました。

 キャッシュフロー計算書の内容は、「会社の1年間のお金の流れを計算している。」といえます。すなわち、このキャッシュフロー計算書をみますと、会社が1年間にどのようにお金を稼ぎ、またお金を使ったか、銀行から借入金としていくら資金を調達したか、銀行にいくら借入金を返済したか、そして決算期末に現金預金がいくらあるかなどがわかります。

 従来の決算書である、「貸借対照表」「損益計算書」では、会社のお金の動き把握することは困難でした。また、「損益計算書」でいくら利益が計上されていてもそれだけの現預金が残っていないという問題点もあります。

目次

ャッシュフロー計算書とは

簡単な例を使って説明していきましょう。たとえば、ある会社で500万円で仕入れた商品を1,000万円で販売したとします。この取引だけで損益計算書を作成しますと次のようになります。

損益計算書(P/L)

 損益計算書(P / L)をみますと、当期純利益が500万円計上されています。しかし極端な話、この会社の社長が儲かったからといって高級車を500万円で購入しますと、この期に稼いだ現金預金はすべて消えます。また、売上の1,000万円を掛売りで販売していた場合、売掛金という資産は増加しますか現金預金は売掛金を回収するまで入ってきません。

決算後2ヶ月又は3ヶ月以内に法人税の申告を行い、税金を約150万円(当期利益 500円× 税率約30%)支払わなければなりませんが、高級車を購入したり売掛金を回収していない場合、納税資金が不足するケースが考えられます

このように、当期純利益と現金預金の増加とは全く別のものになります。すなわち、損益計算書を見ただけでいくら現金預金がいくら増加したかはわからず、キャッシュフロー計算書をみて初めてお金の流れがつかめます。

ャッシュフロー経営とは

 最近、「キャッシュフロー経営」や「キャッシュフロー重視の経営」という言葉をよく耳にします。この「キャッシュフロー経営」は、まさに「キャッシュフロー計算書」による現金預金の流れを重視し、毎期毎期「現金預金」の残高を大きくしていく経営のことをいいます。

先ほど、簡単な例を使って当期純利益と現金預金の増加額が一致しないことをお話しましたが、会社経営ではほかに「当期純利益」と「現金預金増加額」が一致しない原因として、稼いだ利益が売掛金として残り、回収されていなかったり、商品の在庫に変わっていたりしているケース、資金が建物、機械、備品や車両などの固定資産の購入に充てられたり、借入金を返済しているケースなどがあります。

バブル経済以前であれば、損益計算書で「当期純利益」がある程度計上されていれば銀行など金融機関が融資をしてくれました。しかし現在では、担保としての土地の価値が下がっていることもあり、利益が出ているからといって金融機関が簡単に融資に応じてくれなくなりました。そのため、会社では「当期純利益」を計上すると同時に「現金預金」の残高を増やしていくことも非常に重要になってきています。

また、「キャッシュフロー」を重視しませんと、たとえば販売した売掛金が得意先の倒産により回収不能になったり(2015年に経営破綻したスカイマーク(航空会社)では配当率が約10%でしたので、売掛金の90%程度は回収不能になりました。)、利益以上に設備投資を行い借入金の返済が不能になるなど、利益が出ているのに資金繰りに行き詰まるという事態が起こります(これを「黒字倒産」といいます。)。

キャッシュフロー計算書は、現在、上場企業にだけその作成が義務付けられていますが、上記のような理由から非上場企業においても作成することが望ましいと考えます。

甘い決算、辛い決算

「キャッシュフロー計算書」や「キャッシュフロー経営」が重視されているもう一つの理由は、損益計算書の作成方法(これを「発生主義」といいます。)により、会計処理方法によっては利益を多く計上すること(これを「甘い決算」といいます。)や、逆に利益を少なくすること(これを「辛い決算」といいます。)が可能なためです。

たとえば、繰延資産を計上するかしないか、減価償却の方法を「定額法」にするか、「定率法」するかによって「当期純利益」は変動します。これらは合法的な方法ですが、仮に「粉飾決算」を行っている場合には、公認会計士などのプロでないとなかなか見破るのは難しいといわれています。

粉飾決算のごまかしを見つけ出す

 その点、「キャッシュフロー計算書」はキャッシュ(現金預金)の1年間の増減が表示されますのでごまかしようがありません。プロでないとなかなか見破るのは難しいといわれている「粉飾決算」も「キャッシュフロー計算書」の「営業活動によるキャッシュフロー」がマイナスになっていきますので、そこから見つけ出すことができます。

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